世の中にはそれなりの人数の催眠術師がいるはずなのに、催眠音声の制作者がなかなか増えないのは何故でしょう?
実は催眠を掛けるとき、その暗示文(スクリプト)を自分で作る必要はありません。
よく催眠術教室などといって開かれているものは、既成のスクリプトを暗記させたうえで、その使い方を教えるものが多いです。
なかには本来スクリプトが存在し得ないはずの現代催眠ですら、定型文を覚えて済ませている怪しげな団体もありますが、それはさておき...
催眠音声の場合は他人にスクリプトの朗読を依頼するわけで(自分で読んでもいいですがへこみます)、催眠術教室で教わるようなことはほとんど活かすことができません。
催眠音声の制作に必要なのは
スクリプトを作る能力であり、掛ける能力ではないのです。
ある程度慣れてくると、どの術師もスクリプトも自作するようになりますが、催眠術師である=スクリプトが書ける、ではないのです。
また、へっぽこ自身がそうであるように、催眠の知識とエロの知識(妄想力?)は別物です(笑)
そこで、催眠を掛ける観点とスクリプトを書く観点の両方から、催眠のコツを列記してみます。
少々概念的なことが多くなりますが、扱うのが人間の心という時点で概念的になりやすいので我慢してください(笑)
空気を作れ
ハイ、いきなり概念です(笑)
催眠誘導というと、だいたいは声を使いますよね。
文字の場合もありますし、凝視法や驚愕法で言葉少なく誘導することもありますが、基本的には言葉で相手に意志を伝えて誘導するわけです。
実は、まったく無言で誘導することもできます。
実用というよりデモンストレーションや練習にしかなりませんが、端から見ると見つめ合っているだけなのに片方はトランスに入ってしまうのです。
実際には言葉以外でのコミュニケーションにより誘導しているのですが、この誘導には非常に重要な前提条件があります。
それは、誘導される側がこれから誘導されることを(無意識にでも)覚悟している、という前提です。
これは非常に重要なことで、エロゲの催眠に毒されると『相手が催眠に掛かっていることに気づかないのに催眠に掛けることこそ至高』という発想を持ってしまいますが(笑)、そんな都市伝説は捨ててください(それが不可能という意味ではありません)。
被催眠者が『俺はこれから催眠に掛かるんだ』と覚悟をして、催眠者(術師)が『俺はこれから催眠に掛けるんだ』という雰囲気を醸し出すことで、催眠術は成功します。
これが、空気を作れ、ということです。
誘導や深化などの技法の正確さよりも、空気の有無のほうが比重としては高いぐらいです。
概念的過ぎて、催眠音声でどうやって空気を作るんだよ、と文句が聞こえそうですが、催眠音声でも空気を作るべきところは沢山あると思いますよ。
ヒントですが、へっぽこがリアル術師であることを隠さないのは空気の一部です。
『あれ?』と思わせるな
ショー的催眠の大きな目的は、被催眠者に『あれ?』と思わせることです。
被催眠者は動くはずの腕が動かなくて『あれ?』と思って不思議さを楽しみ、(もしいるなら)観客はその様子を見て楽しむわけです。
しかし、誘導と深化が進んで暗示が入ってはじめて『あれ?』と思わせる現象を起こせるのであって、それまでは被催眠者に『あれ?』と思わせてはいけません。
『あれ?』と思わせると術師に対する抵抗を生み、以降の誘導や深化をやりにくくしてしまうだけではなく、最悪の場合は催眠状態から抜けて(催眠が解けて)しまいます。
例えば、最初に目を閉じる指示をしたのに途中で目の前のものを見つめさせられたら、『あれ?』となります。
まだろくに誘導されていないのに幸せに包まれると言われても、『あれ?』です。
普段あまり使わないような言葉遣いをされると、『あれ?』となることもあります。
このように、前後の矛盾や(術師側の)勝手な思いこみ、難しい言葉などは極力避けたほうがいいでしょう。
施術の流れが矛盾することなく、強引に被催眠者の状態を決めつけず、平易な言葉を使うようにします。
ただし、『あれ?』を恐れすぎるとスクリプトに個性が出しにくくなりますので、その辺りはうまくバランスを取るようにしてください。
また、古典催眠の場合は空気を上手く作ることで『あれ?』の発生を抑えることができます(極力回避するのが現代催眠)。
流れを大切に
どんな凄いスポーツ選手でもウォーミングアップも無しに試合に出ても実力は発揮できません。
処女が初体験でいきなり逝くのも、エロゲの中以外では難しいでしょう(笑)
古典催眠では被催眠者の被暗示性に結果が大きく左右されるため、誘導も無しにいきなり幻覚を見ることもあり得なくはないですが、それは1000人に1人の逸材だけの話です。
やはり、誘導してから深化して、充分に深いトランスに導いてから、暗示を入れるべきなのです。
また、ほとんどの被催眠者の場合は、運動→感情,感覚→記憶,幻覚の順番で暗示を受け入れるようになりますから、いきなり記憶や幻覚に関する暗示を入れようとしても入りません。
暗示が入らないことはかなり強力な『あれ?』を発生させますので注意してください。
丁寧に流れを作ることで、被催眠者は『これだけのことをされたのだから催眠に掛かっても仕方がない』と(無意識にでも)思ってくれ、催眠に成功するようになります。
ただし、催眠音声の場合は被催眠者の状態が確認できませんので、ある程度の決め打ちは必要です。
トランスを深くすることや暗示の入れ方を工夫することで『あれ?』の発生を抑えることもできます。
言葉は刃物だ
催眠療法系の本を読むと、暗示には否定的な内容を入れない、と書いてあることがあります。
確かに人間は否定的な言葉よりも肯定的な言葉を受け入れやすいです。
例えば、ニートといえば嫌な感じがしますが、自宅警備員といえば多少はマシに感じるように(笑)
性的な快楽を目的とした催眠音声の場合は肯定的な内容ばかりでは面白みに欠けるので、完全に従う必要はないでしょう。
しかし、同じ内容を伝えるにしても言葉の選び方で印象が大きく変わることには注意をしてください。
『楽しくて気持ちが良い』と『つまらなくなくて痛くない』はニュアンスは違うものの同じような内容を表現しています。
しかし、印象は全く違いますよね。
トランス中はこの印象を判断するのが無意識になりますので、より印象が大きくなることがあります。
これは、メタファー(暗喩)は無意識に働きかけやすいという性質によるものです。
メタファーとは直接的ではない例えのことですが、現代催眠に限らず催眠ではメタファーを多用します。
例えば、『ゆったりとした、気持ちのいい世界に入っていきます』は『トランスに入る』というメタファーですね。
このように、(催眠的に)正しい目的に使われるメタファーですが、言葉の選び方次第では間違った影響を与えてしまうことがあります。
催眠音声でよく使われている『大丈夫』という単語などは、へっぽこは使わないようにしています。
トランス中なら多分平気だと思いますが、半覚醒状態や覚醒時に『大丈夫』と使うと、被催眠者に『大丈夫?と心配されるような怖いことをしたんだ』という印象を与えやすいからです。
これもメタファーです。
プロの催眠術師でも平気で『大丈夫』と使っている人もいますので、考え方の違いだけではあるのですが、言葉の選び方一つで刃物にもなるということだけは理解をしておいてください。
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