精神医療の場において、催眠がほとんど使われない時期がありました。
精神分析の創始者フロイトによる催眠の否定がその主要因とされていますが、催眠に再び脚光を浴びさせたのが20世紀最大の催眠療法家
ミルトン・エリクソンでした。
エリクソンは複数の身体障碍を持ちながらも、それらを克服するだけでなく、逆に障碍により限られた感覚を鋭敏にすることで独自の催眠手法を磨いていきました。
彼は催眠誘導に抵抗している相手であっても、魔術とも思える彼独自の方法で、いとも簡単にトランスに導きました。
従来の催眠術では被暗示性の高低が問題とされましたが、彼は従来の手法では困難とされた相手もトランスに導くことができました。
彼自身の療法は催眠に限ったものではありませんが、その手法全体に催眠誘導に対する彼の考え方が活かされたものとなっています。
そして、彼自身は自分の手法を体系化することを好みませんでしたが、弟子や他の研究者への指導は熱心に行っており、彼が用いた催眠手法は
エリクソン催眠あるいは
現代催眠と呼ばれて現在も精神医療の現場で広く使われています。
ちなみにビジネスの世界でもよく名前の挙がるNLP(神経言語プログラミング)は、エリクソンの弟子であるグリンダーとバンドラーがエリクソンを含めた3人の優秀な心理療法家の手法を簡素化し体系化したもので、よくNLP=現代催眠と誤解を与えるような表現を見かけますが間違いです。
エリクソンの考え方を示す言葉が残されています。
『治療に抵抗するクライアントなどいない。柔軟性に欠けるセラピストがいるだけだ』
では、彼の名を冠したエリクソン催眠(現代催眠)とはどのようなものでしょうか。
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