催眠の流れ

催眠の流れ

一般的に催眠の世界にはショー的な催眠療法的な催眠があります。
テレビやステージで催眠術を使って不思議なことを見せるのがショー的な催眠で、悩みや習慣を改善するために医療的に行うのが療法的な催眠になります。

催眠音声はまだ発展途上の分野ですのではっきりした定義はありませんが、療法の要素が少し入ったショー的催眠といったところでしょうか。

ショー的な催眠には典型的な流れがあり、催眠音声のスクリプトを書くうえでも参考になりますので、解説しますね。

まず、見落としがちなことですが、ショー的な催眠では『これから催眠に掛けるんだ(掛かるんだ)』という意志表示が重要です。
療法的な催眠ではこれがマイナスに働くこともあるのですが、ショー的な催眠では掛けられる側の自覚と納得性が意外に大きな意味を持ちます。
そのため、術師が催眠に関する説明をしたり、自分がいかに腕の立つ術師かを語ったり(威光暗示)します。
催眠音声の場合は、音声を聞く時点でこの自覚が生まれているはずなのであまり意識する必要はありません。
ただし、音声の最初で横たわらせるとか電気を消させるとかのお約束は、誘導に有効であるのと同時にこの自覚を生む効果がありますので、積極的に取り入れるといいでしょう。

ステージで催眠を掛けるときは被暗示性のテストが欠かせませんし、対面での施術ではラポールの構築が重要になりますが、催眠音声には適用しづらいので省略します。

被暗示性のテストを兼ねて、指固めなどと呼ばれるカタレプシーの誘発を最初に行う術師もいます。
指固めは厳密には催眠現象ではなく類催眠現象であり、人間の身体の仕組みを利用して催眠に近い現象を起こしてしまうことです。
例えば、しばらくの間、ぎゅっと固く拳を握っておき開こうとすると、とっさには指が動きにくくなります。
これは単なる自然な現象ですが、このときに術師から『指が開かない!』と言われると、本当に開かなくなることがあります。
これが類催眠現象であり、催眠の一歩手前の状態です。

トランスには深さがありますが、人間はごく軽いトランスには簡単に入ります。
しかし、他人からの暗示を受け入れる段階のトランスに入れるには準備が必要であり、そのステップの第一段階として類催眠現象は有効なのです。
マラソンの前の準備運動といったところでしょうか。

準備運動が済んだ後は、本格的にトランスへと誘導します。
へっぽこなどは指固めで被暗示性を確認したら、そのまま運動支配の暗示を入れてしまうことが多いですが、相手に催眠に掛かったという認識をしっかり持ってもらうために誘導というプロセスを経るのが正統派でしょうね。

催眠のプロセス全体にいえることですが、催眠に掛かったという認識を与えることは重要です。
これがあると無いでは効果が全く違います。
対面での施術では相手の反応を見ながらなんらかの手段で認識を持ってもらうのですが、催眠音声の場合は一方通行にせざるを得ませんから、この認識を与えるのが難しいですね。

誘導の方法としては、ライターの炎や五円玉(笑)を見つめさせる凝視法や、深呼吸や脱力による弛緩法や、ある状況を想像してもらうイメージ法を使うことが多いです。
そしてほとんどの場合、そのままある程度のトランスに入るように深化させます。
数字を逆に数えたり、落下するイメージを与えたり、より脱力を深めさせたりすることで、トランスは深くなっていきます。
イメージ法は誘導と深化を組み合わせやすいので、誘導に成功した時点で深化が進んでいることが多いですね。

トランスがある程度深くなると、運動支配の暗示が入るようになります。
運動支配レベルのトランスなら意識ははっきりしていますが、不思議さを楽しんでもらうために暗示を与えてから半覚醒させる術師が多いです。
例えば、トランス状態で椅子から立ち上がれなくなる暗示を入れて半覚醒し、実際に立てない不思議さを楽しんでもらう、といったようにです。

半覚醒というのは施術の途中で一時的にトランス状態から普段の状態に戻ってもらうことですが、完全には覚醒していないので簡単に元のトランス状態に戻すことができます。
また、潜在意識が活発になったままなので、ちょっとのキッカケで簡単に暗示を入れることができます。

ショー的な催眠では、トランス状態にして深化させる、暗示を入れて現象を楽しんでもらい暗示を解く、これを繰り返します。
深化には色々な手法がありますが、トランス状態と半覚醒状態を行き来することや、暗示を入れて解くこと自身が深化の役割を果たしますので、うまく活用するとスムーズな施術になります。
催眠音声でもトランスと半覚醒を繰り返して深化する手法を使っているものがありますね。

施術を進めてトランスが深化していくことで、感覚支配や感情支配、さらには記憶支配や幻覚支配の暗示まで入るようになります。
但し、このレベルまで到達できる人は滅多にいません(笑)
漫画やエロゲに出てくる催眠術師は、誰でも瞬時にこのレベルにしてますから、よほど腕がいいんでしょうね(笑)

一通りの施術が済むと、最後は完全に覚醒させます。
覚醒の前に後催眠暗示を入れることもありますね。
療法的な催眠だとこの後催眠暗示が非常に重要だったりしますし、催眠音声でも次回の誘導をスムーズにするための後催眠暗示を入れているものがあります(成功しているかはさておき)。

完全覚醒では、数字を数えながらだんだんと普通の状態に近づけていくものが多いです。
完全覚醒までやってはじめて施術の完了であり、術師としての責任です。
催眠音声でも完全覚醒のための解除音声を入れておくべきです。
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