深化のやり方

深化のやり方

誘導で軽いトランス状態に入れても、暗示が入るとは限りませんし、感覚支配や感情支配を起こすにはトランスを深める必要があります。
そこで、催眠誘導後にはトランスを深化させます。

催眠業界の慣習から(笑)トランス状態を形容するには『浅い』『深い』と表現するため『深化』と呼ばれますが、ここで改めてトランスという用語の意味を再確認してみます。
トランス状態、日本語では変成意識状態と呼びますが、これは通常とは違う意識状態のことです。
つまり、意識がここになくても、いまになくても、ふつうでなくても、トランス状態なわけです。
ですから、深化を言い換えると通常とは違う意識状態への変化をより促進させることになります。

さて、このように定義すると、深化の本質が分かりやすくなりませんか?
ある特定の一方向に向けることではなく変化を促進するのが深化であり、誘導によって導いた方向性の強化こそが深化の本質となります。

極論を言えば、誘導法を繰り返せばそれだけで深化しますし、深化法という特別な手法は存在しないという考え方もできます。
とはいえ、これまで蓄積された深化法の様々なバリエーションが存在し、誘導法によって適した深化法がありますので、代表的な深化法を紹介します。


カウント系

どの誘導法にも適用しやすく、最も多用される深化法です。
数字のカウントと深化を結びつけて、一定の数をカウントし終わったときに一気に追い込みます。
カウントダウンのほうが効果が高いとされており、脱力を組み合わせることも多いです。


数を10逆に数えると、あなたは今よりもっと深い、もっと気持ちのいい世界へと入っていきます
10、9、8、7、6、
数を数えれば数えるほど、身体中の力がますますと抜けていく
5、4、3、2、1
はい、あなたは今までに感じたこともないような気持ちのいい世界に、す〜〜っと入っていきます


イメージ系

分割弛緩法や脱力を促すイメージ法との組み合わせに向いた深化法です。
リラックスしたり、脱力したり、落下したりする想像をさせます。
リラックスや脱力の際には、自律訓練法でイメージする身体の状態を参考にするといいでしょう。


あなたはいま、春の暖かい日差しがあたるソファに横たわっています
ふわふわの毛皮で覆われたソファはとても肌触りがよく、あなたの身体を優しく包み込みます
横たわって日差しの暖かさを感じると、身体中の力が抜けて、眠〜くなってきます
手の力も、足の力も抜けて、どんどんと気持ちよくなってきます
ぽかぽかと暖かい日差しが、あなたの頬にあたって、眠くて眠くてたまらない
手も足もほんのりと暖かくなってきて、頭がぼ〜っとしてきて、とても気持ちがいい
あなたは深〜い、深〜い、とても気持ちのいい眠りに、入っていきます


ある程度、被催眠者の状態を特定するため、はまると効果が高いものの外すこともある手法であることには注意してください。


揺さぶり系

対比する状態を繰り返すことで被催眠者(の肉体と精神)を疲弊させて深化させる手法です。
例えば、催眠状態と半覚醒状態弛緩と緊張温感と冷感を繰り返します。
誘導法やそれまでの施術の流れによって対比させる対象が変わります。
暗示と解除を繰り返すショー的催眠に適した深化法ですが、催眠音声でも利用できるでしょう。


3つ数えると、あなたは深い催眠状態から目を覚まします
しかし、あなたはとても眠くて眠くて仕方がありません
目が覚めたとたん、あなたはすぐにまた、今よりもっと深い、もっと気持ちのいい眠りへとす〜〜っと入っていきます
1つ、2つ、3つ、はい!


沈黙系

弛緩系の誘導と相性のいい手法ですが、被催眠者に話しかけるのをやめてしばらく放置しておくだけでも深化します。
5分程度放置しておくだけで勝手に深化してしまうので術師としては楽なんですが(笑)、被催眠者が寝てしまう危険性もあります。


これからしばらくの間、あなたに話しかけるのをやめておきます
あなたの頭の中になにかが浮かんでくるかもしれませんが、無理に考えを抑えようとしなくても結構です
私が話しかけない間、あなたはもっと深い気持ちのいい世界へと入っていきます


沈黙と書きましたが、耳障りにならない程度のBGMをかけておいてもいいでしょう。
その場合は音楽に意識を向けさせておくと効果的です。


混乱系

難しいことを聞かせ続ける、あるいは被催眠者にさせることで頭を混乱させて、顕在意識を弱める(意志を放棄させる)深化法があります。
何回も聞くことを前提にした催眠音声には適用しにくい手法ですが、うまくはまると一気に深いトランスに入れることができます。


これから声を出して数字を500から逆に、2つおきに数えてもらいます
あなたが数字を数えている間、私があなたに話しかけますが、気にせずに数え続けてください
(ある程度数えたら)
数を数えれば数えるほど、身体の力が抜けていきます
肩、首、あご、ほほ、ひたいと力が抜けていき、そして心の力も抜けていきます
心の力が抜けていくと、あたまがぼ〜っとしていき、だんだんと次の数字が思い出せなくなってくる
そう、あなたはもう、次の数字を思い出すことができない
頭の中から数字が全て消え、真っ白になっていく

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