暗示の入れ方

暗示の入れ方

催眠状態を味わうことを目的とした場合を除き、基本的に催眠誘導は暗示を被催眠者に与えるために行います。
それが快楽のためでも、リラクゼーションのためでも、生活習慣の改善のためでも、被催眠者になんらかの示唆を与えるものは暗示であり、暗示を受け入れやすくするために催眠誘導を行う(催眠状態にする)わけです。

余談になりますが、本来の語義からすると古典催眠中に与えるのは暗示ではなく明示ではないか、と言われることがあります。
確かに、身体が動かない!、と言われて動かなくなるのは、暗に示しておらず明確に示していますから明示という気もします。
しかし、この場合は、身体を動かすな!→はい動かしません、という意識的な働きかけではなく、身体が動かない!→あれ動かないぞ、という無意識的な働きかけです。
そのため、明示ではなく暗示と呼ばれています。
ただし、本来の意味での暗示と区別するために直接暗示と表記されている場合もあります(本来の意味での暗示の場合は間接暗示)。

さて、催眠の目的が暗示を入れることである以上、催眠講座の最も重要な章が暗示の入れ方になるはずなんですが、正直、へっぽこは困っています(苦笑)

ショー的催眠の場合は半覚醒状態の被催眠者に暗示を与えるのが基本になるため、驚愕法や凝視法、混乱法を使った暗示を入れる技術が重要になります。
しかし、催眠音声では催眠状態のままで暗示を入れることが前提となりますので、わざわざ驚愕法などを使って顕在意識によそ見をさせる必要はなく、トランスの深さだけ注意していれば暗示は入ってしまうものなのです。
なので、最も重要な章のはずが説明することがないというか(笑)

以上終わり、とするのも申し訳ないので、ちょっとしたコツを列挙しておきます。


催眠深度1、運動支配! by まぼろし佑幻

既出ですが、トランスの深さに応じて暗示の入りやすさが違います。
入りやすい順に、運動支配>感情支配=感覚支配>記憶支配=幻覚支配、となります。
軽いトランスでは運動支配の暗示は入っても感情支配の暗示は入らない傾向がある、という意味です。
ただし、被催眠者によって傾向は異なりますので、あくまで目安と思ってください。
へっぽこの経験だと、運動支配がほとんど入らないのに記憶支配は簡単に入った被催眠者がいます。


ココロのスキマお埋めします、ドーン! by 喪黒福造

催眠全般に言えることですが、これなら催眠に掛かっても仕方ないよね、と被催眠者に思ってもらうことが重要です。
そのために、これからこんな暗示を入れますよ→ドーン!→こうなりましたよ、という流れが効果的なわけです。
合図自身になんらかの効果があるわけではないのですが、合図をすることで説得力が生まれます。

三つ数えて指を鳴らすと、腕が持ち上がらなくなります
ひとつ、ふたつ、みっつ、パチン!
ほら、腕が持ち上がらなくなりましたよ


大事なことなので2度言いました by みのもんた

催眠療法などでメタファーを使ったほうが効果的な場合を除いて、暗示は被催眠者に対して分かりやすく与える必要があります。
抵抗感を生みにくい分かりやすい言葉を選ぶことが大切ですし、暗示を復唱することも効果が高いです。

スクリプトを文章で書いていると、簡単過ぎる言葉よりも簡潔な専門用語を使いたくなりますし、復唱することにも違和感を感じるでしょう。
しかし、掛かってナンボの催眠の世界ですから、被催眠者が受け取りやすい暗示を心がけてください。


イメージするのは常に最強の自分だ by アーチャー

催眠の究極の目的は被催眠者に固有結界を作ってもらうことですが、それはさておき...(笑)
こと暗示だけに着目しても、自分を基準にしてもらうとイメージしやすくなって効果を出しやすくなります。

例えば、

三つ数えると、あなたの身体はとても敏感になります



三つ数えると、あなたの身体はいつもより敏感になります

を比べてみてください。

別に、前者の暗示が間違っているわけではありません。
これでも充分に暗示は入るでしょう。
しかし、後者のほうがより効果的です。

これには、『いつもより』と比喩対象を提示されることでイメージしやすくなる、比喩対象(この場合は敏感な自分の身体)を想像することでイメージを強固にするという、二重の意味があります。

催眠音声の場合はどうしても被催眠者の情報が得られないため、被催眠者の状態を決め打ちすることで違和感を生みがちになりますが、このようにイメージの余地を残した上で被催眠者自身を基準にした比喩表現を活用することで、より効果を高められるのではないでしょうか。
前へ 次へ